春のあしおと

「ねえ、だれか春のあの子の足おと、きいた?」
ようやく土の中から、あたまをのぞかせた
クロッカスの妖精が
まわりの花たちに、たずねます。
「あら、わたくしは知らなくてよ。」
つんとすまして
スイセンの妖精がつぶやきます。
「あー、そういえばきのう、桜(さくら)のえだに
すわっていたってきいたよ。」
ムスカリぼうやが、ほっこり答(こたえ)えます。
「はやく、みんなの前へ
すがたをみせてくれないかしら?」
アネモネは可愛(かわい)い花びらを
うたうように、ゆらします。
「そうね、はやく春のあの子が、きてくれないと
夜(よる)はとても寒(さむ)くってもう春なんか
ずっとこないんだわって、きもちになってしまうわ。」
雪割草(ゆきわりそう)も、そのすがたのように
ひかえめに、言葉(ことば)をつなぎます。
春の花たちは、みんな
春のあの子のうわさ話でもちきりです。
だれが、いちばんに見つけたんだとか
だれから聞(き)いたんだとか
そろそろ、あらわれるころだとか
言いたいほうだいです。

するときゅうにあたりがザワザワしはじめたかと
思うまもなくブワーーーーーーっと風(かぜ)が
花たちの、あいだをはしりぬけていきました。
「きいた?」
「きいた!」
「みた?」
「みた!」
春一番だよね!」
「そうそう!」
口ぐちに笑顔(えがお)ではなしだします。
「そう!春のあの子だね」
「あのこがかえってきたよ!」
春の妖精たちは、みんなうれしそうです。
まちにまった{春のあしおと}を
とうとうきいたのです。
これからは春の花たちが大好きな
あたたかい春がやってくるのです。
もう、寒(さむ)さを、きにせず
どんどん空にのびて
花をさかせることができるのです!

春!満開!
色!とりどり!



**出演者**
スイセン
ムスカリ
アネモネ
クロッカス・
ゆきわりそう
その他、春の花たち
 


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